虹色マテリアル
「由良、おはよー」
「あ、茜。おはよ」

イヤホンの外側から聞こえた自分を呼ぶ声に、ふわりと由良が顔をあげればにんまりと微笑む友人の顔が目についた。

「またお兄ちゃんのバンドの曲聴いてるんだ?」

「ちょ、またってなに、またって。わたしそんなにNAEばっか聴いてないし。今聴いてたのは普通の曲だよ」
「ふーん、そうなんだ。でも今度あるライブは行くんでしょ?」
「あー……行く。毎回チケット送ってくるんだもん。行かなきゃ悪いからね」

NAEと言うのは、ボーカルのミナトを中心にギター、ベース、ドラムを加え結成された四人組の男性バンドだ。

最近は少しずつ知名度を高めているらしく、ベースを担当する由良の兄も、音楽を職にした生活をなんだかんだと充実しているようだ。


「でも確かにいい曲多いよね、この間の新曲のバラードの歌詞とかちょっと泣きそうになったよ」
「作詞はミナトさんだけどね。お兄ちゃんは曲の方だよ」
「あ、そっか。でももちろん曲もよかったよ」
「うわ、適当すぎ。でも確かにいい曲だったしね」



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