愛を教えて ―背徳の秘書―
その言葉に朝美は青褪めた。

思ったとおり、卓巳は他の社員を病室の外にやり、朝美とふたりきりになる。


「怪我の具合はどうだ? 今度こそ災難だったな」

「はい……少し痛みますの。お話は落ち着いてからでよろしいでしょうか? 今は、宗さんと和田さんのことも心配でしょうし。それに、社員がこんな事件を起こしてしまって……」


卓巳の目に朝美は実にもったいない秘書であった。

有能である分、惜しいとすら思う。男であれば、あるいは、セックスや結婚の対象として男を捕まえることに心血を注がなければ……。


宗はどうも女に甘い。

しかも、一度関係した女には救いようがないほど弱くなる。


もちろん、卓巳も万里子には弱いので、その公式を当てはめれば、男は総じてそういった傾向にあるのだろう。


「メディカルセンターの医師に話を聞いた。患者の痛みを否定はしないが、捻挫であるならごく軽度。本当に立てないほどの痛みを伴うなら、精密検査の必要がある、とのことだそうだ。カルテが必要か?」


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