愛を教えて ―背徳の秘書―
「宗さん……落ち着いて、雪音さんは遠慮してるだけよ。山南さんの想いが本物なら、負けたような気がして……譲ろうとしてるの。だから」


雪音に背を向けた宗を万里子が追って来た。 

万里子の言葉はわかる。

だがそれは、雪音が全く宗の言葉を信じていない証なのだ。


「もういいんです。あれが彼女の本心でしょう。普通のことですよ」

「違うわ! それでも必要なんだって言って欲しいのよ」

「何度言ってもどうせ信じやしないんだ! もうこれ以上、余計なお節介はやめてくれ!」


思いがけない宗の怒声に、万里子の表情が曇る。


その直後であった。宗は襟首を掴まれ、壁に叩きつけられる。


「卓巳さん! やめてっ」


怒りに満ちた形相で、卓巳は宗の首を締め上げた。


「万里子に八つ当たりをしてる場合か? この失態をどう始末つける気だ!?」

「……社長」


宗はこのとき、初めて知ったのだ。京佳が薫に話したという、身に覚えのない“ふたりの関係”を。


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