愛を教えて ―背徳の秘書―
当初マスコミは、一流企業で起こった三角関係を発端とする痴情のもつれ、にハイエナの如く群がった。

だが、それを卓巳がお得意の力技を繰り出し、事件の規模を可能な限り縮小した。


それには薫が、メディカルセンター内の心の相談窓口「メンタルサポートセンター」に通っていた事実が発覚したからであった。


薫は常に不安を抱え、躁鬱の症状が出ていたという。

本人には正式な治療を促したが、それを強制することはできない。相談を受けた側にも守秘義務があり、会社に通報するような真似もできず……。



――事件の発端は若い女性の他愛のない嘘と、それを信じたことによる悲劇。嘘をついた女性は非常に反省し、事件を起こした女性は心を病んでおり治療に専念することになった。巻き込まれた男性は怪我が治り次第、仕事に復帰予定である――



世間を騒がせたことに対する謝罪と共に、藤原本社の正式発表である。

卓巳は薫の事件を、可能であれば起訴猶予に、最悪でも執行猶予付きの判決を取るよう、弁護団に命じたと言う。


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