愛を教えて ―背徳の秘書―
そんな中、宗は年末年始の旅行に雪音を誘った。それは、GWに約束していた道後温泉と松山市内の宗の実家に立ち寄るプランである。

クリスマスは、休暇でテキサスに戻ってしまったロード氏に代わって働き、宗は戻って来られなかった。その代わりに、年末年始は一週間休みを取ったと言う。


万里子に、宗の実家に挨拶に行く、と伝えると、喜んで雪音にも休暇を取らせてくれた。


「なんて挨拶したらいいんだろ」


雪音はそう呟くと、お湯の中に半分顔を沈めた。

両親とも退職まで公務員をされていたという。凄く真面目なご両親に違いない。

ちゃらんぽらんに見える宗だが……あれでも卓巳と同じ東大出身で、弁護士資格もある。学歴もない、離婚家庭に育った雪音との結婚は絶対に反対されそうな気がする。


「だめ……自信ない」

「何の?」


ひとりで入っていたはずが、急に話し掛けられ雪音は慌てて周囲を見回した。

すると、ちゃっかりと岩の間から宗がやって来て、お湯の中に入ってくる。


「ちょ、ちょっと待ってよ。ここ、いま女湯!」

「大丈夫、大丈夫」

「大丈夫じゃ……」


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