愛を教えて ―背徳の秘書―
雪音にとって、ごく普通の家庭を持つことは夢だ。

思わせぶりな宗の言葉に、どうしても彼との結婚や子供を想像してしまう。


「どうして、私を誘うの? ご両親と会ったら……私はどうなるの?」


雪音は険しいまなざしのまま、宗の前に立つ。


「どうなるかな? 試してみたいと思わないか?」


雪音の腰に宗の手が触れた。

その直後、強い力で引き寄せられ……。ふたりは抱き合い、そのまま深く唇を重ねたのだった。



結局、道後温泉に一緒に行く約束をしてしまった。

宗の実家に行くかどうかは、向こうに着いてから決めればいい、という。

これでもし、宗の両親が留守だったりしたら、完璧に騙されているケースだろう。


でも、もう止められない。

雪音は宗と別れたくない、と思った。ふとした瞬間にも、宗のことを考えてしまう。幸せな未来を思い描き、一喜一憂してしまうのだ。

一日も早くGWが来ればいい。どちらにしても決着はつくだろう。


だが……雪音の望むGWがやって来ることはなかった。 


< 57 / 169 >

この作品をシェア

pagetop