愛を教えて ―背徳の秘書―
宗は自分の過ちには気づいていた。

だが、どうやって正せばいいのかがわからない。自分の人生の、どの地点に戻っても同じ過ちを犯し続けている。正しい答えの在り処が、どう目を凝らしても彼には見つけられない。


「お願いします。社長……なんならこの場で彼女にプロポーズしてもいい! だから」

「駄目だ」

「社長!」

「気づいてないのか? シャツの襟の裏側に口紅がついている」


宗はハッとして、慌てて襟を押さえ、下を向く。


「――やっぱりな」

「……」


その言葉に嵌められたことを悟った。


「宗、私にもセックスの気配くらいわかる。今日は会わずに帰れ。明日はもう少しマシな言い訳を考えて来てくれ。今日と同じなら……来年度は、秘書室の顔ぶれが大幅に変わることになる」


卓巳の言葉に唇を噛み締める。

顔を上げることも、視線を合わすこともできないまま、無言で頭を下げる宗だった。


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