FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
蓮は立ったままの蒼馬に声をかけた。

「えっ、は、はい」
 
少し間をあけて蒼馬は返事をした。
 
だが蒼馬は座ることなく、ただ聖を見つめている。
 
異様な空気を感じ取った蓮が2人に声をかけようとした時。

「……セイ」
 
蒼馬が動いた。聖の目の前に立つ。

「歯ぁ食いしばれ」

そう言うや否や、蒼馬の拳が聖の頬に炸裂した。聖の体は勢い良く飛ばされ、床に叩きつけられる。

呆気にとられる蓮を尻目に、蒼馬は倒れた聖に覆いかぶさり、胸倉を掴んで叫んだ。

「何やってたんだよ今まで! 心配させんじゃねーよ、馬鹿野郎っ!」
 
その瞳には、うっすらと涙さえ浮かんでいる。

「何で……連絡くらいしろよ! 俺達、友達じゃねえのかよっ……」

「蒼馬……」
 
蒼馬の言葉に顔を歪める聖。するとそこへ、ニュッと手が割り込んできた。

「そのくらいで離してやれ。聖は事故に遭ってまだ日が浅いと聞いている。体も万全ではないだろう」
 
真吏だった。その言葉に蒼馬は驚く。

「事故……?」
 
慌てて手を離し、聖の横に片膝をついた。

「ごめん、俺……」
  
謝ろうとする蒼馬の言葉を、手を上げて制する。

「いいよ。……ありがとう」
 
頬に受けた痛みよりも、何よりも。こんな自分にも心配してくれる友人がいたことを、心から嬉しく思った。

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