平凡太~ヘイボンタ~の恋
「…辻野…さん?」


「ハイ…」


「そっか…」


「あの!」


「ん?」


「ボクは栞に気持ちはありませんからっ。明日も明後日もナイですからっ」


「うん」


それだけ言って一華先輩はボクにコーヒーをくれた。


「…ミルク、ください」


「いいの」


「え?」


「平太くんはブラック、それでいいの」


まるで。


影としての『友詞』も拒まれた気がした。


ボクなんかじゃ『友詞』の代理にはならない、そう言われたようで。


苦いだけのコーヒーに口をつけた。


「パパぁ…。パパぁ…!」


詞音ちゃんの泣き声に慌てて寝室へ行った。


ボクを呼んだ泣き声はすぐに止んで、スヤスヤと寝息を立てている。


一華先輩と顔を見合わせて笑った。


ボクは。


やっぱり代理でもパパでいたい、そう思った。
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