平凡太~ヘイボンタ~の恋
「平太、くん…?」


「ねぇ、ママ?へーたって、だぁれ?」


「あのね、詞音。パパは『友詞』ってお名前だったでしょう?でもね、天国から降りて来る時に、もう死にませんって神様とお約束してきたの。そしたらね、約束と交換にお名前を変えられてしまったの。新しいお名前が『平太』なんだよ?」


「ふぅん。人魚姫は声の代わりに足をもらったもんねー」


「そうなの。だから詞音のパパはね、『平太パパ』なんだよ?」


「うん、しおんわかった。パパはへーたパパー!」


「一華先輩…?」


「ごめんね、平太くん。子供だましだけど、許してくれる…カナ?」


「許すだなんて…!いいんですか?『友詞』じゃなくて」


「うん。もうお別れしたから。きっとね、詞音に必要だったのは友詞じゃなくて、平太くんだったんだ、って、思えるの。またゴメンネ?勝手なこじつけで」


「平太…パパ…」


たった1つの名詞がボクがここにいる理由をくれたような気がした。


別れを告げた『友詞』の影じゃなく。


平太としてのボク。
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