改良版 うしろの正面だあれ
ある夜、母が美津に絵本を読み聞かせてくれた。
もうそんな歳じゃないよ、と思ったが、嬉しくて黙っていた。
自分が赤ちゃんみたいで少し恥ずかしかった美津は、布団の中でもじもじしながら母の言葉を待つ。
「『しあわせ』
せかいには、いろんなひとがいます。」
「ごはんをたべられないひとや、びょうきで くるしんでいるひと、て や あし がないひとだっています。」
「かぞくがいないひと、がっこうにいけないこども、め や みみ がきこえないひとが、せかいにはたくさんいます。」
「いやなおもいをしているひとも、たくさんたくさんいます。」
「だけど、みんながみんな ふこうではありません。」
「なぜなら、ひとには しあわせをみつける ちからがあるからです。」
「どんなちいさなことでも、それをしあわせだとおもえる こころがたいせつなのです。」
「なくのは がまんしなくていいけれど、ないたあとは すこしだけ つよくなりましょう。」
「あなたのことをみてくれているひとは、ちゃんといるから。」
「あきらめないで。みうしなわないで。みうしなっても、またみつけて。」
「あなたのえがいた ゆめ。きぼう。」