悪魔のようなアナタ ~with.Akito~

3.悪意




数日後。


定時後、灯里はバッグを片手に会社から駅への道を歩いていた。

晃人と暮らし始めて10日ほどが過ぎた。


晃人と過ごす時間はいつも幸せに満ちており、晃人の穏やかな、嬉しそうな表情を見ると灯里も嬉しくなる。

晃人に愛され、守られる幸せを灯里は心の底から噛みしめていた。


――――こんなに幸せだと、失った時が怖い。


灯里はため息をつき、目を伏せた。

灯里の胸の中には重人に言われた言葉が杭のように打ち込まれている。


『あれは将来、私の跡を継いで忍村の重鎮となる人間だ。あれの婚約者もそれにふさわしいお嬢さんでなければならない』


晃人と自分では身分が違うということは灯里もわかっている。

例え九条朝子と別れたとしても、晃人にはまた彼にふさわしい縁談が来るだろう。


今はただ、晃人と一緒にいられれば幸せだ。

晃人が自分と一緒に居ることで、幸せを感じてくれるのならばそれだけでいい。

未来のことは、今は考えたくはない……。


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