君に、この声を。



「そこ、智那やってみてよ。――あ、やっぱピッチ低い」

「あ、やばい。音わからなくなっちゃった」

「えっと……こういう音程。――てか、怜突っ立ってないでなんか言ってよ」

「俺、楽譜もろくに読めない人だから」



すでに床にあぐらをかいて座っている怜に頼ったのが間違えだったと気づいた私と朱莉は、2人でここを乗り越えようと決めた。


といっても、朱莉は現役陸上部の短距離ランナーで音楽にはあんまり詳しくないし、私はブラスバンド部で毎日音楽に浸っているけど、音感には自信がない。

1つ幸運だったのは、朱莉は小学校のときにエレクトーンを、私は現役でピアノを習っていることだけだった。



「じゃ、智那、もう1回。意識して。――んー、やっぱわかんないっ!」

「先生ーヘルプー!」



私と朱莉がそう叫びながら座り込んだ。



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