才能のない作曲家
記憶の中の幸せ




君が僕だけに見せるはにかんだ笑顔、
僕は大好きだった。

イタズラっ子な君だから、
一緒にいるとよく、僕は君に驚かされていた。




――1年前――




「あっつーっっ!!」

「なに、どしたの?」

「お餅!!引っくり返そうとしたの!!」

「・・・まさかと思うんだけど、素手で?」

「・・・、ごめんなさい」




物知りなくせに、変なトコ抜けてる。




「あれ使わなきゃ」

「あれって?」

「ほら、あれだよ、挟むやつ」

「なに、ペンチ?」




ペンチなわけないだろ。
この状況のどこでどうペンチを活用するつもりなんだよ、お前は。




「焼肉とかで使う、肉とか取るやつ」

「割り箸?」

「じゃなくて、バーベキューとかでも使うじゃん、なんだっけなほら・・・」

「ああ!!火バサミ!!」




あ〜、惜しい。
それだよ、それに限りなく近いんだよ。
でも今はそれが言いたいんじゃなくてさ・・・

ほら、天狗じゃなくて・・・。

あっ!




「トングだよ!」

「トンボ?」




知らねえのか、トング・・・。

それは出てこないよな、言葉。




「・・・、何か、悪かったな」

「いーよ!」




いーよ!じゃねえ・・・。

何で俺が謝ったのか、お前わかってないだろ、絶対。

40も近いってのに、ホントどこまで可愛い生き物なんだか。




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