【掌編集】魔法使と少年少女。
 あとはみんな死んでた。小さく男は言うと君だけでも救えて良かったと破顔した。

「あんたでも死んだ奴らはどうもできないのかよ」

「できるよ」

 さらりと男は否定する。

「でも死者復活は倫理に反する。そんなこといちいちしてたらこんな戦争終わるはずがないし」

 確かに、と男の意見に賛同し、ルルゥは言葉を探すように視線を空に泳がせた。

「……ありがと」

 思わぬ反応だったのか男は目を丸くしてルルゥを見やった。

「何だよ」

「いや、初めて感謝されたから」

「死ぬような傷治してもらったんだから感謝くらいするだろ、普通」

「あぁ、そっか、そうだね」

 取り残された子供みたいに泣きそうに笑っている男に、彼が今まで生きてきた苦境の片鱗に触れたような気がした。

「ルルゥ」

「え」

「俺の名前はルルゥ。あんたは?」

「…クロウ」

「クロウ、あんたに貸し一つできたから俺にできることがあったら何か言ってくれ」

「じゃあ、もっかいキスしていい…?」

 ためらいもなく予測できた答えにルルゥは苦笑し、背を浮き上がらせるとクロウの唇に音を立てて唇を寄せた。

「これで貸し借りなし」

 ルルゥはおかしそうにクスクスと笑った。
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