好きになっても、いいですか?
「――社長」
あれだけ忙しいと、口にしなくても見ていればわかるほどの人間が、なぜこんな時間にこんな場所に。
麻子は言いたいことが纏まらずに、ただ暗い廊下に立っている純一を見つめるだけだ。
逆に、自動販売機の光を浴びている麻子に向かって、純一が口を開く。
「その様子だと、とりあえずは大丈夫のようだな」
その言葉に麻子は、まさか自分の父親のことでわざわざ心配をしてきたのか、と信じられない思いで純一の言葉を聞いた。
「――なぜ……」
「あっ、いた!麻子ちゃん!お父さん、目を開けたわよ!」
純一の言い掛けた言葉の後ろから、パタパタと忙しなく駆け寄るナースサンダルの音と、看護師の声が聞こえてきた。
その呼び掛けに、麻子ははっとして、純一を置いて、病室に急いで戻った。