好きになっても、いいですか?

「俺もまだ、君の父親……芹沢さんに聞きたいことが残っている。君が首を縦に振れば、全て済むことなんじゃないのか」


(なによ……。なんなのよ。
なんであんたなんかにそんなこと言われなきゃならないのよ。

あれだけ横柄な人間かと思えば、急にこんなこと……)


麻子は暫く純一を見つめて、頭を整理した。

自分の下らないこだわりで、父の命を救えなくなるのなら意味がない。
目の前の男は、援助ではなく“貸し”にしてやると言う。


麻子は心を決め、首をゆっくりと縦に振り、今までで一番深いお辞儀をしながらはっきりと言った。


「申し訳ありません。必ず、全額お返しします――――」


(大体、お父さんに聞きたいことが残ってるって何よ――……)


そんなことも頭の隅を掠めつつ、麻子はあれほど嫌っていた純一に頭を下げたのだった。




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