好きになっても、いいですか?

「無理をするなって!」


支えられた手はあの、失礼で横柄な男の手。
だけど、なぜか今は優しい手。


(夢の中で拭ってくれたのはきっと、この手……)


麻子は未だに紅い頬をしたまま、潤んだ瞳で支えてくれている手の主を見上げた。


「まだ、震えてる――」


純一がそういうと、麻子の手を取った。
純一が言うように麻子の手は小刻みに震えていた。

それは純一が原因ではなく、先程倒れる前後からのこと。


「あ……の、もう……離して――――」


いつもの威勢の良さがない麻子。
純一はそんな麻子を、なぜか離せずにいた。

そして麻子もまた、いつもなら突き飛ばす勢いがなく、ただ黙って純一に身体を預けるだけだった。


< 128 / 445 >

この作品をシェア

pagetop