好きになっても、いいですか?


「すみません。これを、常務にお願い出来ますか」


一冊のファイルを敦志に手渡された麻子は、言われたとおりに常務のいる部屋へ向かう。

すると、その部屋から丁度常務付きの秘書、美月が退室してきた。


「あ、お疲れ様です」
「……お疲れ様です。何か常務に御用かしら?」
「これを、早乙女さんから預かってきまして」
「そう。ありがとう。私が渡しておきますね」


半ば奪い取るように麻子の手からファイルを受け取ると、美月は再び部屋に戻ろうとドアノブに手を掛ける。

麻子はその美月の対応に複雑になりながらも、来た道を引き返そうとした。すると、背中越しに美月から話しかけられる。


「今日、社長の婚約者がお見えになったんですって?」
「え?」
「その方が帰られるときに見たそうですって。宇野さんが」


なぜそんな話題を振られるのかよくわからない。
そんな話をしている時間が勿体ない、と麻子は半分聞き流して歩き出そうとした。






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