好きになっても、いいですか?

「多分、ただの貧血かと。私がついてますから、どうぞ皆さん戻ってください」


敦志がなるべく大事にしないように、柔らかく落ち着いた口調で駆け寄った数人の社員に言う。
周りの社員は、敦志に言われたとおりに数十メートル離れた元の場所へ戻って行った。


「――顔色が……」


木蔭にいる麻子は、その影のせいではなく、実際蒼白い顔をしているので、敦志も些か心配になる。


「脱水症状……?日射病……ではないと思うけど……」


敦志は一人、ぶつぶつと寝ている麻子の横で呟いていた。
そこに、もう一つの影があることに気が付き顔を上げた。



「――――しゃ⁈」
「しっ!」


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