好きになっても、いいですか?
「あら?純一さん、まさかそれ」
すっかり居座り、話しこんでいた雪乃が、そろそろ、と腰を上げた時だった。
視線の先にはブルーの小さなバッグ。
「お弁当?なんて持ってきているんですか?」
「……」
「ああ、そんな訳ないってわかっています。どなたかからの差し入れですね?」
ゆっくりとそのバッグに近づき、触れようとしたとき――。
「雪乃ちゃん。そろそろ外出する準備をしなければならないんだ。タクシーを呼ぶから帰って」
純一がそういうと、同時に伸ばしていた手を雪乃は引っ込めた。
「……お弁当。いいかもしれませんね」
にっこりと笑って、雪乃はソファから自分の荷物を手にとると退室していった。