好きになっても、いいですか?

純一の父である藤堂が、そのことを知らされたのは、もうあと2カ月後に産まれるという頃。

母体にも影響が出やすい。簡単に堕ろすことも不可能。
加えて彼女は、脅迫まがいに藤堂に迫る。


“私に手出ししたら、警察とマスコミに。責任を取らない場合も、世間に隠し子の存在を知らしめる”、と。


さらには、藤堂の妻は既に他界していることも、子どもが未だに居ないことも初めから知っていたうえで、その女はこうなるように仕組んだ。


『性別は――男の子よ』


それはダメ押しの一言。

藤堂の当時の年齢はすでに40半ば―――。
他界した妻は、子供が出来る体ではなかった。

後妻も考えたが、妻を愛していた為に仕事に明け暮れ、歳だけとっていった。


少し過去のこととして整理が付き始めた心に、その女は入り込んだのだ。

巧みな言葉と、信用させる態度で。


< 231 / 445 >

この作品をシェア

pagetop