好きになっても、いいですか?


「お待たせいたしました」


麻子が戻ってきたときには、ちょうど応接室から出てきたところだった。


「ではこちらをお渡し願えますか。是非一度、ご挨拶したい、と、しがない一企業の者が言っていたと。お伝え下さい」


麻子から受け取った名刺の一枚をそう言いながら、純一は差し出した。


「ありがとうございます。バカ息子に伝えておきますわ」


肩を揺らして笑いながら答えた社長に玄関先まで見送られ、麻子達はシステムジャパンを後にした。


「……」
「……」


車内に乗ると、麻子はちらりと隣に座る純一の顔を窺った。
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