好きになっても、いいですか?


「ああ、やはりここが落ち着く」


純一が、ドサッと自分の椅子に腰を掛けてそう漏らした。


「普通は自宅で言う言葉ですけどね。社長は自宅よりも会社がお好きなようで」
「……何とでもいえ」


敦志と純一のやりとりは、やはり社長と秘書を通り越して兄と弟のよう。


麻子は見なれた二人の関係が、どこか微笑ましく感じていた。
“あの”藤堂社長が、早乙女という秘書といる時だけに見せる顔と態度。


やはり彼らは、家族という強い絆がある。



歳が近く、信頼できる人がいる。


それは麻子にはないもので、心底羨ましいものだった。



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