好きになっても、いいですか?
麻子は自分の初めての沸き上がる感情を懸命に抑えて純一の手を軽く振り払い後ずさりを下。
「――私は違いますから。勘違いしないで」
(お願いだから、これ以上私に近づかないで。
これ以上あなたと距離を近づけてしまうと、私はあの日のことを差し置いて自分の為に生きてしまう)
手を拒否された純一は、麻子の目が泳いでいて自分を見ていないことからそれは本心ではない筈だと確信する。
そして、吹っ切れている純一は、こんなことで引き下がる訳もなく、再び麻子に近づこうと靴を鳴らす。
「俺には君が必要だ。仕事でも、プライベートでも」
「でも··私は」
「君がどうでも関係ない」
純一が麻子の腕を捕まえると、自分に引き寄せて胸の中へとおさめる。
この手、香り、心拍音――。
全てが心地良く感じてしまう自分が怖い。