好きになっても、いいですか?

「仰っている意味がよくわかりません」
「ふふ!そう。じゃあ、単刀直入に申し上げるわ」


麗華の姿勢が正されて、鋭い目つきを向けられた。


「早々に、退職願を提出して頂けないかしら?」


いくらなんでもストレートすぎる麗華の言葉に、麻子はさすがに呆気にとられて麗華を見た。

麗華は、綺麗なローズカラーの口紅を塗っている唇をゆっくりと動かす。


「先日も、お伝えしたわよね?あなたの“過去”を、私は全て知っているの」
「……」
「人を……それも、お腹の大きかったお母様を殺してしまっただなんて。たとえ事故だとしても、その事実が露わになれば社内でも――下手をすれば、取引先にも影響すると考えるのが妥当だわ。
ねぇ?そう思わない?」


麻子の目の前で立ち止まり、再び腕を組みながら顔色を窺う麗華は、既に勝者の顔つきだった。


「あなた……この会社と、社長を――潰す気?」
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