好きになっても、いいですか?


麻子がいなくなった克己の元に、一人の見舞客が訪れた。


「御加減はいかがでしょう――――芹沢さん」
「……あなたは?」


カーテン越しに見えた人影は、一歩前に出てその姿を現した。

克己はじっ、とその人物を見るが、目の前に立つ男は、どうしても記憶にない。
記憶障害にでもなったのか、と思ってしまうほど相手の男は自分を知ったように普通に接してくる。

しかし、すぐに自分は記憶障害ではなさそうだ、と克己は思った。


「はじめまして。わたくしは、麻子さんの勤務先である、藤堂コーポレーションの早乙女と申します」



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