好きになっても、いいですか?

恐怖感はない。

けれど、後悔の念が芽生えてる。

こんなふうになるくらいなら、いっそ自分の欲望のまま、彼に身を預ければ良かった、と。


心に、彼がまだいるから。

目を瞑った時に浮かぶ人。



それだけに全神経を集中していたら、自分の上の男の重量感がまるでなくなった。
そして足もとで、ドサッという音が聞こえてくる。

聞こえてきたのはそれだけじゃない。


「おい!」


(この声、知ってる――――)


麻子がゆっくりと目を開けるとそこにいたのは……。


「――――社長……」



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