好きになっても、いいですか?
(なんで、こんなとこまで!もう時間も遅いのに)
色々と思うことはあるが、なかなか麻子は声にならない。
「芹沢さんはどうだった」
そんな自分に構うことなく、純一はあくまでいつもどおりに麻子にそう聞いた。
「げ、元気でした……」
「そうか」
先程支えてくれていた手は、麻子が一人で立ち直した後も掴まれたまま。
麻子は、正直会話に集中できない程、その手に意識が捕われていた。
そんな麻子を知ってか知らずか、純一は黙って麻子の顔を見つめてきた。
ドクドクと脈打つのは、もはや心臓だけでなく全身がそうなったかのような感覚に陥ってしまう。
月明かりで落ち着いていたはずの心は、いとも容易く崩壊させられるのだ。
「――お前は大丈夫か?さっき、あのまま別れたから……」