好きになっても、いいですか?

『どうして――――』


それは実は、純一自身にもはっきりとはわからないことだった。
自分がなぜ、こんなにも麻子に執着をしているのか。
それでも、“自分に不可能なことはない”、と、それだけのことと頭から決めつけるようにして。


「どうする?秘書課に配属されるか、父親と路頭に迷うか――――」


最後まで下世話な言い方をする純一を、麻子はキッと睨みつける。
きっとこの先、どこか就職先を見つけようとしたって何かされるのかもしれない。

麻子は、もう一度父の手紙に視線を落としてから言い放った。


「――――やります」


それは、麻子にとって“負け”の意ではない。

これから勝負する、その位のつもりの意気込みでそう返事をしたのだ。


純一もまた、そんな闘志を燃やしている麻子を感じて、なせだか心が騒ぎ始める。

この時はただの挑戦者を迎え撃つ、そんな感情だと――――……。



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