好きになっても、いいですか?


「御加減は?」
「ああ……まずまずです」


大きな花束をテーブルに置くと、静かに笑って横になっている克己を見下ろした。


「申し訳ありません。諸事情で社長は仕事がありまして……麻子さんも」


伏し目がちにそう説明するのは敦志だった。


「そう、ですか。……早乙女さん。麻子は変わったかな?」
「……そうですね。確かに変わったかもしれません」
「じゃあ、前に話をしていた“彼”も?」
「――――ええ」


克己と敦志は、鮮やかな花束に視線を向けたまま穏やかに口元を緩ませた。


「それはもう。“彼”は180度、人が変わったかのように」


ふっ、と息を漏らして笑いながら敦志は言う。
それに対して、克己が宙をぼんやりと見ながら目を細めて言った。


「ああ、でも。二人は“変わった”訳じゃなくて“戻った”のかもしれないな」
「……そうかもしれませんね」











*END*



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