好きになっても、いいですか?


「彼女はいわゆる天才ではない。けれど努力家、という感じです」
「そうか……」
「いい人材を埋もれたままにするところでしたね。アスピラスィオンの佐伯さんも気に入って下さったようですし」
「……」


静かな部屋に夕陽が射し込み、穏やかな雰囲気で会話を交わす。そんな二人の間にノック音が割り込む。


「はい」
「失礼致します」


ノックをし、入室してきたのは麻子。
逆光を受けて、眩しそうに目を細めなごら二人を見た。


「どうかされました?」
「いえ……校正処理が一通り終わりましたので。次に急ぎの仕事があれば、と」
「ああ!終りましたか。では」
「この散在している、資料・報告書を整頓して欲しい」


敦志の言葉を遮り、純一が麻子に指示を出した。
純一が視線だけで指したところには、崩れこそしてはいないが、今にも崩れそうに山積みになったファイルや冊子。


「え?それは、私が」
「いや、いい。“芹沢さん”に」


純一が敦志の申し出を却下すると、敦志はそれ以上何も言わずに麻子に目をやった。


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