好きになっても、いいですか?

「どうしてそんなこと、わかるのよ?」
「父さんを甘く見るなー。こう見えて、これまで色々な人間を見て、関わってきたんだ。そのくらい、すぐにわかるさ」


父の言葉を疑う余地はない。

そのくらい、たくさんの時間、外にいて、本当にたくさんの人間に揉まれてきたのだろうから。
優しい人、頭のいい人、頑固な人、融通の利かない人。
そして、社会のほとんどは、裏の顔を持っていて、良くも悪くも探り合いをしながらビジネスを続けていたのだろう。


「むー……。確かに早乙女さんはいい人っぽいけど、アイツはどうだか……」
「アイツっていうのは藤堂社長か?」
「え?知ってるの?」
「彼も来たんだよ、ここにね」

(あの社長が、わざわざここに?)


麻子は耳を疑ったが、どうやらこれも嘘ではないらしい。
何をしにきたのか、胸がざわざわする。
父の容体に関係するようなことをしてなければいいが――そんな心配が先に思い立つ。



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