囚われの姫
足音が遠退いていくと…、ティアラの目からはらはらと涙がこぼれ落ちる。
思い出すのは、優しかった父、正妃ではなかったが父に愛されていた母。
二人が生きていた頃の幸せな記憶。
あの頃にもう一度戻れるなら…、今までに何度思ったことだろう。
もう、ティアラは限界だった。
暗闇への恐怖が彼女の心臓を痛いほど押し潰す。
呼吸の仕方を忘れたように、上手く息が吸えない………。
酸素が薄れ、荒くなる呼吸の中、自らの体を支えられなくなったティアラはバタリ…と牢の冷たい石の床に倒れ込む。
(お父様……お母様…………。)
遠くなって行く意識の中、ティアラの脳裏に浮かんだのは大好きな父と母の笑顔だった。