探偵事務所は休業中

「……」

それを真顔で見つめる焔美。
彼女はしゃがみ、破片を拾い始めた。

どうしてこんなにもどんくさいんだろう……
何をやっても、上手くいかない。

拾った破片をビニール袋に入れ、掃除機を取ってこようと立ち上がる。
歩き出した瞬間、足がもつれて転んでしまった。

床に残った細かい破片が、焔美の手のひらに刺さる。
それで切ってしまったのか、手のひらを赤い筋が伝った。

「……」

立ち上がりもせず、手をじっと見つめる彼女。
その時、台所のドアが少し開いた。

「大丈夫ッスか?」

霞の顔が覗く。
彼はドアを大きく開けると、掃除機を手に中へ入ってきた。

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