背に吹き抜けるは君の風
2人のナイショ

ーーー

靴箱の前、革靴にはきかえたところで、ぱらぱら、突然、雨が降りだした。

グラウンドや校庭の桜の木を6月の雨粒がたたいて、たちまち、あたりがグレイにぼやけていく。

梅雨の季節は、ほんとうに天気が変わりやすい。

(愛の彼氏は一体、何者なんだ……)

あの日から、あたしは暇さえあればもっぱらそんなことを考えていた。

折りたたみの傘を広げて校舎を出ると、ばしゃばしゃ、傘なしで駆けてきた男の子が、あたしを追いこそうとした。

「お、美南じゃん。」

「悠人!」

「ラッキー。そこのコンビニまで、入れてって。サッカー部の連中と待ち合わせしてるんだ。」

「え!?」

「忘れちゃってさ。傘、俺が持つよ。」

ひょいっと悠人があたしから、傘を取りあげる。

鼓動がうわずったみたいに急に速くなる。

(これって、相合い傘だよね……)

心臓がもっと高鳴りだした。

ちらっと悠人の顔を盗み見ると、目が合ってしまった。

あたしはあわてて、目をそらす。

心音が隣の悠人に聞こえてしまいそう。

いつもはふつうに悠人と話してるはずなのに、いざとなったら言葉が出てこない。

それに、まわりにいる下校途中のほかの生徒たちの視線が気になる。

みんなが、あたしたちに注目してる気がする。

(って、考えすぎ?でも、男女で、相合い傘って!)

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