ブルーブラック2
『それはマズくない?せめて呼び方はちゃんと言った方がいいよ』
「え?…そうだよね。お客さんとかいるしね」
『そうじゃなくて。義兄さんもいるからってこと』
「智さん?」


椿の言っていることがイマイチピンとこない百合香は首を傾げて、離す言葉の語尾を上げる。
椿はそんな相変わらずな姉に若干呆れながらも、放っておけない性格と、なんだかんだで大好きな姉に対する思いで丁寧に説明する。


『姉ちゃん··義兄さんが嫉妬深いのはオレですら知ってることだよ?姉ちゃんと違って義兄さんは視野広いし勘がいいんだから、絶対そういうの気がつくって。
例え何もないってわかっていても、どうなるかは姉ちゃんが一番知ってるんじゃないの』


まさか弟にそんなことを深刻な声で言われるなんて思っていなかった百合香は気が付けば帰宅中の足が止まっていた。

そして、後ろから明るいヘッドライトの光が伸びていることに気が付いて電話を耳に充てたまま振り向いてみると、見覚えのある白い車が徐行していた。


「··ごめん、椿。ありがとう。じゃあ家に着いたから」


電話を切ってその白い車に近づいて行く。


「今日は早いんですね」
「なんか、早く君に会いたくてね」


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