ブルーブラック2

「···よし!じゃあ後はインク吸い上げて書いてみて」


金山が手早くペン先をルーペで見ながら調整し終えると、その万年筆とインクボトルを百合香に差し出した。

黒い光沢のある万年筆。

もちろんこの一本も百合香にとって大事な万年筆だ。


ゆっくりと軸を回転させてコンバーターを覗かせる。

ボトルにペン先を浸してゆっくりとその中に吸い上げられるインクの色を堪能すると、ぽたりぽたりとインクを2¸3滴落としてから軸を元に戻す。


いつものように右手に万年筆をおさめてまっさらな紙に向かう。


このドキドキ感が堪らない。


新しい紙に筆を下ろす。
それだけでも百合香にとってはわくわくとする瞬間なのだから、今、自分のオリジナルインクを描いてみるこの瞬間は何倍もドキドキとするのだ。

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