ブルーブラック2

5.本音



「どう?あれからヤツは」


フェアも終わって通常通りの客足に戻ると百合香は予定通りの休憩時間に上がることが出来ていた。

そして休憩室でお弁当を広げて食事をとっているところに現れたのは綾だ。


「“ヤツ”って・・・生田さんですか?」


浮かせた箸をもう一度置いて百合香は綾を見上げて苦笑した。


「一人しかいないじゃない!あんな掻き回す人間初めて出逢ったわ」
「あはは・・・確かに」
「しかも、色々と揉めたってのに普通に働ける神経を疑うわ!」
「あ・・・それ、私のせい・・かも、です」


鼻息を荒くして未だに椅子に座らない綾を上目遣いで見ながら肩を竦めて百合香は声を小さくして言った。


「え?なんで百合香のせいなのよ?」
「わ、私が“辞めるなんて許さない”っていうようなことを言ったので・・・」
「はあぁぁぁあ??!」


その休憩室に響き渡る綾の声は廊下まで漏れる位だった。


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