ブルーブラック2

# 5 意外な一面


「禁煙?」


休憩室で聞こえたその声は綾のものだ。


「はい…。いえ、私が勧めた訳じゃないですよ?」
「そりゃあねぇ。今や常識でしょう! 妊婦がひとつ屋根の下にいるんだから」


綾は食べ終わった弁当のゴミをまとめながら言った。
百合香はこれからお昼で、まだ開いてない弁当をそのままに綾との話に夢中だ。


「そう、なんですけど。でも、私、一度も喫煙なんかしたことないので」
「で?」
「その…一般的に“大変”て聞きますよね? 頻繁に吸ってたら、禁煙て」
「病院に禁煙科とかあるくらいだからね」
「だから、その…大丈夫なのかなぁって」


百合香の言い分を理解した綾は頬杖をつき、足を組んで溜め息を吐いた。


「相変わらずねぇ…そのお人好し」
「や…! かと言って目の前でって言うのは今はさすがに…」
「わかったわかった! 通りで最近柳瀬くんの姿を見かけない訳だ」


綾は皮肉混じりに笑いながら休憩室の中にある喫煙室へと目を向けながらそう言った。


「智さんがイライラしてるとこって想像出来なくて」
「んーー…そうねぇ。ある意味見ものかも」
「桜井さん…」
「…冗談よ」


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