ブルーブラック2
「ちょっと、万年筆に興味出てきちゃって」


照れたように笑ってみせた美咲はふわりと甘い匂いをさせながらさらに一歩智に近づいてそこへ手を伸ばした。


「ああ、悪いね。これは特別なものだから」


美咲の甘えた視線や声に全く動じずに、さらりと一言だけ答えて一歩踏み出しその場に美咲を置いていく。
美咲は一瞬素に戻り、智の後ろ姿を呆然として見るだけだった。


「じゃあお疲れ様」


智は顔を少し美咲に向けただけでそう言って廊下へと出てしまった。




「“あの人”にはあんなに優しい顔をしてた癖に···。興味出てきたのは万年筆なんかじゃない――――柳瀬店長に、ですよ?」


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