裁き屋始末録
 
しばらく微笑みながらイクノを見送っていた朱乃だったが、


「宿尾…
角戸田を消したら当然、この選手権は中止だよね。
イクノちゃん、すごい努力家なんだ。

でも性格が地味で恥ずかしがり屋だから、あんまり表に出ないのよ。
だから、このコンテストに出ると決めた時、すごく勇気を出したと思う。

将来は自分の店を絶対出したいって言ってたから、これをキッカケにしたいんだ」

朱乃はうつむいて、一人呼吸あけてから涙声で言った。


「…私達、あの子の夢を壊しに来たんだよね…」


朱乃の肩に手を置く宿尾。

「朱乃ちゃんらしく無いぜ?
あの子なら大丈夫だよ。
ほれ、見てみなよ」

宿尾は、朱乃の目の前に一枚のカードを差し出す。


「今、朱乃ちゃんの話を聞きながら、あの子の将来を占ってみた。
その結果が…これだ」


朱乃は差し出されたカードを手に取り、じっと見つめた。

「そのカード、
[星]の意味は[希望]。
さ、俺達は俺達にしかできない仕事をしようぜ」


朱乃は、前髪をかき上げるフリをしながら目を拭いた。


(宿尾、ありがとう…)


そして宿尾に一言。

「行くよ!」

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