裁き屋始末録
カルカラコロ…
カルカラコロ…
「こ、今度は何だ?
一体これは何の音だ?」
角戸田は目を凝らして見る。
何やら黒い手袋のような物が見えた。
「誰か、そこに居るのか!?」
呼び掛けに答えるように、黒い手袋が角戸田の目前に突き出された。
その手には何かが握られている…
カルカラコロ…
手の中で転がる[何か]が、先程の音をたてている。
それは…
「ク、クルミ…?」
黒いミトンの中に見えたのは、2つのクルミだった。
それが角戸田の眼前で、
メキ…
バキバキバキバキバキッ!!
砕かれたクルミは、ミトンの中からハラハラと舞い落ちた。
「ひぃっ!」
恐れおののいて逃げようとする角戸田の喉を、ミトンが素早く掴む!
「チェックメイトよ。
外道、断末…!」
ゴキ
金粉も薄れ、角戸田が最後に見ることができたのは、無表情で自分を見つめる朱乃の顔だった…
パティシエという職業は手先の器用さなどが必要だと思われがちだが、実際は何十キロという原料を持ち上げたり、生地を何回もこねなければならないため、腕力・握力も必要だという。
まして朱乃のように人気パティシエともなると、スィーツを他店より大量に手作業で作らなければならないため、自然に超人的な握力が身についたのだ。