裁き屋始末録
 
演奏会は、何とか無事に開始された。


香奈の奏でるバイオリンは聴く者の心を癒し、日常の喧騒を忘れさせる…

美しい旋律が人々を魅了し始めた頃…

村雨は行動を開始した。


向かう先はコンサートホールの地下。

地下2階…

3階…4階…

5階。

「ここだ。
こんな所に隠れていたとはな」


ギィ

重々しい鉄製の扉を開く。


プシュ!

「!!っ…」

村雨の右腕に、突然鋭い痛みが走った!

ボウガンの矢のトラップだ!

「ち…、トラップか!
用意周到なこって…
づっ!!」


矢を抜き取る村雨は、しだいに意識が朦朧としてくるのを感じた。

「ぐ、痺れ…薬か…
古い…手を…」


「はぁい。
裁き屋のお兄さん、お困りみたいですね〜」

村雨がゆっくり振り向いた先では、女性がニコやかに可愛らしく手を振っていた。


「もしかしてぇ、
同じ的を狙ってたりするぅ?
じゃあさぁ…
お兄さんの嘆き料、香奈ちゃんに譲っても良い?
お兄さん、その身体じゃ裁きは無理でしょ?」

村雨は、微かな声で聞いた。

「誰だ?…アンタ…」


「あたし、香奈ちゃんの親友でぇ…
御終屋(おしまいや)の[沢あこ]で〜す。

通り名は[舞奴(まいやっこ)のあこ]っす。
よろしくね〜!」

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