裁き屋始末録
「俺が裏切ったという根拠はあるのか?」
村雨も、上着の胸ポケットから黒い千点棒を取り出す。
アジト内に、緊張の冷気が張り詰める!
「ちょ、ちょっとぉ!」
朱乃が秋野の右肩を掴んで止めようとした。
それに対して秋野は過敏に反応し、朱乃の手を掃う。
「お前…!
今、俺の肩を砕こうとしたのか?
村雨とグルなのか!?」
「そんな、私は…」
秋野の気迫に押され、いつもの強気を出せない朱乃。
「で?
結局、誰が裏切り者なんだ?
村雨が正しかった場合、お前らが裏切ってることになるぜ?」
既に住江もガムテープを手に持っていて、いつでも投げられる体制だ。
「香奈ちゃん…
どうしよう?」
「朱乃ちゃん、大丈夫よ。
みんな誤解してるだけだから」
そう言う香奈の足も、緊張で震えていた。
「闇狩りに狩られる前に、俺達で互いの命を狩り合う、か…
因果な業務に手を染めて来た俺達に相応しい末路かもな」
瀬尾もベルトから細身の剣を抜きながら、自嘲気味に言った。
もう止めなければ!
そう思ったのか、
「村雨さん、もうやめて!」
と、香奈が。
「瀬尾さんっ!」
朱乃が、それぞれ二人を止めようとした。