裁き屋始末録
 
「俺が裏切ったという根拠はあるのか?」

村雨も、上着の胸ポケットから黒い千点棒を取り出す。


アジト内に、緊張の冷気が張り詰める!

「ちょ、ちょっとぉ!」

朱乃が秋野の右肩を掴んで止めようとした。

それに対して秋野は過敏に反応し、朱乃の手を掃う。

「お前…!
今、俺の肩を砕こうとしたのか?
村雨とグルなのか!?」

「そんな、私は…」

秋野の気迫に押され、いつもの強気を出せない朱乃。

「で?
結局、誰が裏切り者なんだ?
村雨が正しかった場合、お前らが裏切ってることになるぜ?」

既に住江もガムテープを手に持っていて、いつでも投げられる体制だ。

「香奈ちゃん…
どうしよう?」

「朱乃ちゃん、大丈夫よ。
みんな誤解してるだけだから」

そう言う香奈の足も、緊張で震えていた。


「闇狩りに狩られる前に、俺達で互いの命を狩り合う、か…
因果な業務に手を染めて来た俺達に相応しい末路かもな」

瀬尾もベルトから細身の剣を抜きながら、自嘲気味に言った。


もう止めなければ!

そう思ったのか、

「村雨さん、もうやめて!」

と、香奈が。

「瀬尾さんっ!」

朱乃が、それぞれ二人を止めようとした。

< 58 / 80 >

この作品をシェア

pagetop