黄昏の檻【密フェチSS】

「……61、62」

あと10秒。
少し早いくらいかなと思っていると、彼の左手が柵を握り締め、私は彼の腕で囲われた。
力がこもった左腕に、地脈のように広がる血管。

頭がそれで一杯になって、数えてた数を忘れてしまう。

「ごめん。もう一回」

「うん」

ずっと手首を握っていると変な気分になる。

もっと触れたい。
もっと感じたい。

そう思うと、私の脈動の方が激しくなる。

「脈速いでしょ」

「ちょっとだけね」

「速いんだよ、好きな子といるから」

「え?」

見上げたその瞬間。
左手が私の頭を掴み抱き寄せられた。

「好きだ」

「……え?」

唇のあたりに、彼の頸動脈。
脈打つ鼓動が聞こえそう。

「返事は?」

黄昏の檻の中で、私と彼の心音が重なり合う。


【fin】
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

引きこもり令嬢の契約婚約

総文字数/63,412

ファンタジー81ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ブライト王国の二大侯爵家のひとつであるシーグローヴ侯爵家。 長女であるセアラは、引きこもりの読書家だ。 高等教育を終えてもなお、大学に聴講生登録をし、婚活とは真逆の生活を送っていた。 そんな彼女に、王太子エリオットとの縁談が持ち上がる。 なんでも三人いる候補のひとりになったらしい。 薬学を学ぶ彼女には、どうしても会いたい存在がいる。 王太子、エリオットを加護する聖獣、シロフクロウのホワイティだ。 結婚には興味がないが、ホワイティには会いたい。 かくして、縁談に臨むことになったセアラだが、エリオットが予想外な提案をしてきて……? 引きこもりの侯爵令嬢 セアラ・シーグローヴ(18) × 実は策士な微笑みの貴公子 エリオット・オールブライト(20) 手元で書いていると進まないので、ファン限定公開します。 週1程度ののんびり更新です。 めどがついたら一般公開にします。よろしくお願いいたします。 2025/10/15  更新開始
処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
  • 書籍化作品
[原題]あなたがお探しの巫女姫、実は私です。

総文字数/132,289

ファンタジー161ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
かつてフローライトの精霊に愛された国と言われたボーフォート公国 しかし、いつしかフローライトが採れなくなり、国は衰退していった。 難民を保護していた隣国レッドメイン王国は、第三王子ルークを大将として軍を編成し、 ボーフォート公国を征服する。 王となったルークの善政のおかげで日々の暮らしは送れるようになったが、まだまだ復興したとは言いずらい。 そこでルークは、20年前に失踪した精霊と話ができるという巫女姫を探そうとする。 一方、メイドのアメリは、ひょんなことからルークの雑用係に任命される。 若くてイケメンな王に仕えたいメイドはいっぱいいるのになぜ自分なのか。 秘密を抱えるアメリは、頭を抱えていた。 だってそう。実はアメリは巫女姫の娘。 そして、精霊の声が聞こえるのだから──。 ボーフォート公国の若き公王 ルーク・レッドメイン(25) × アメリ・スレイド(20) 公王の雑用係に抜擢 とにかく正体はばれたくないんです! 完結しました!  2024/5/7~2024/5/17 
表紙を見る 表紙を閉じる
ファンレターのお返事で使用していたSSです。 現在のお返事ペーパーは3巻目の後の内容になっております。 だいぶ時間が経過したので、1巻目、2巻目のときのSSを掲載しています。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop