黒い翼


「あとは任せてくれないかな」


ふいに、やわらかい声が後ろからした。


バッと、誰かと思って勢いよく振り返ると、そこには瀬来 藍(セキ アオイ)がいた。


例の、王子。


生徒会長でもあるのに何故か2年も留年している、頭のいい人なのかただのバカなのか。


よく分からんやつ。


人選ぼうよ、校長。


2年も留年してる奴に学校任せていいのかよ。


まぁ、生徒に人気あるから何とも言えないんだろうけど。


そして更に、まさかの俺と名前が被ってるっていう。


「君は戻っててなよ。あとは僕がやるから」


「お…おぅ……」


その時は何とも思わなくて、その場を立ち去ったけど、後々ものすっげー気になったことがある。


『君は戻っててなよ。あとは僕がやるから』


俺は瀬来が言ったことを思い出す。


『あとは僕がやるから』


……なにを?


『君は戻っててなよ』


なんで?


俺に見られたくないこと?


『あとは僕がやるから』


なにを?


そんな疑問が浮いた。


だけど俺はそれを調べる術なんて持ち合わせてない。


結局、迷宮入りになった。




―—だけど、後に俺はそれを知ってしまうのだった
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