黒い翼


余程飢えていたのだろう。


彼女は口の中に血が無くなるのを感じると、血が出ている僕の手にかぶりついた。


彼女が僕の血を啜る姿は、まるで飢えて礼儀を知らない卑しい怪物のよう。


と、我に返ったのか、彼女の動きが一瞬止まった。


「クソッ」


そして自分のしていることに気づいたのだろう。


悔しそうに吐き捨てた彼女は、僕を突き飛ばして鏡に映った自分を殴り、出て行った。


彼女の血の匂いが充満する。


「とんだじゃじゃ馬だ」


拒絶されればされるほど、興味がわく。


僕は口角を上げた。


「どうしたの、瀬来くん!!?」


さっきの音を聞きつけたのだろう。


女の教員が入ってきて、息を飲む。


右手が血だらけで、突き飛ばされたようにベッドに靠れかかっていて、入り口近くにある鏡にヒビと血がついている。


そして見られたのかは分からないが、笑う僕。


この状況は驚くのも無理もない。


「じ、事情は後にするとして、手当てを……」


そして僕はされるがまま、言われるがままの生徒になる。

< 27 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop