黒い翼


さっきの血の香りは、京?


俺は瀬来の横を通って、匂いを辿る。


着いたのは旧校舎の屋上。


いたのは右手を血で染めた京が、何もかもに絶望したように立っていた。


そして、今に至る。


「なんで、もっと早く言ってくれねえんだ」


全て話した後、彼女の口から悔しそうな声音がする。


さっき、京が自分の手に俺の爪を滑らして血を出させたことで、彼女もヴァンパイアだということは分かった。


「……言ってくれれば、別れずに済んだのに…」


「え?」


彼女は泣いたようにそう言い、この場を後にした。


どういうこと?


あの時、京が別れを切り出したのは、俺が人間だったから?


それに、あの口調。


俺と別れたこと後悔してんのか?


俺は。


……俺は、期待してもいいのか?
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