黒い翼

束縛

――身体が、動かない


自分の部屋に紫葵を連れてきていた彼女を気絶させて、彼女の好きな甘い香りのする僕の部屋に連れてきた。


そして目を覚ました彼女の顔が、そう言っていた。


「おはよう。随分と遅いお目覚めだね」


「……、…?」

彼女が何かを喋ろうと口をパクパクさせる。


そして、不思議そうな顔。


「気づいた?」


「………………………」


ふふ、と笑う僕に彼女は僕を睨んだ。


「駄目だよ。自分の部屋に僕以外の男、連れ込んじゃ」


「………………………」


「彼は友達かもしれないけど、梗は僕のものでしょう?」


「………………………」


不意に、彼女の顔つきが変わった。


悲しそうな。


まるで、どうして分かってくれないの、とでも言いたげ。


「分かってくれないのは梗の方でしょう」


「………………………」


「どうして僕だけ見てくれないの。どうして彼の所へ行くの。梗は僕のでしょう?」
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